レベル:中級|記載の情報は2026年10月17日時点のものです。
国内の暗号資産取引所に預けている資産は、取引所が破綻したり、ハッキングで流出したりしたら、どうなるのでしょうか。日本には、利用者の資産を守るための法律上のしくみがあります。一方で、守られない場合があることも知っておく必要があります。
この記事では、次の3点を整理します。
- 法律で決められている、利用者の資産を守るしくみ
- 守られない場合
- 過去の主な事例と、その後の対応
利用者の資産を守る4つのしくみ

1. 分別管理
取引所は、利用者から預かったお金や暗号資産を、自社の資産と分けて管理しなければなりません(資金決済法第63条の11)。利用者の日本円は、信託銀行などに信託して管理します。管理の状況は、定期的に公認会計士や監査法人の監査を受けます。
2. コールドウォレットでの管理
利用者の暗号資産は、原則として、インターネットにつながっていない方法(コールドウォレット)で管理しなければなりません。インターネットにつながった方法で管理できるのは、利用者の暗号資産の5%以下に限られます(暗号資産交換業者に関する内閣府令第27条)。つまり、95%以上はコールドウォレットで管理されています。
3. 履行保証暗号資産
インターネットにつながった方法で管理している分については、取引所が同じ種類・同じ数量の暗号資産を自社で持ち、別に管理しておく必要があります。万一ホットウォレットから流出しても、この分で返せるようにするためです。
4. 優先して返してもらえる権利
取引所が破綻した場合、利用者は、分別管理されている暗号資産から、ほかの債権者より先に返してもらう権利があります(資金決済法第63条の19の2)。
2026年に成立した法改正で暗号資産の規制が金融商品取引法に移ったあとも、資産の適正な管理を求めるルールは引き継がれます。くわしくは2026年の暗号資産の制度改正まとめで説明しています。
守られない場合
- 価格の下落:値下がりによる損失は、だれも補償しない
- 貸し出している暗号資産:貸暗号資産で業者に貸した分は、分別管理の対象外。破綻すると返ってこないおそれがある。→貸暗号資産とは
- 無登録業者や海外の業者:日本の法律のしくみの外にあり、トラブルの際に守られにくい
- 自分の操作ミスや詐欺:アカウントの乗っ取り、送金ミス、詐欺で送った暗号資産は、多くの場合取り戻せない
預金保険のように、国が一定額を保証する制度は、暗号資産にはありません。分別管理は「業者の資産と混ざらないようにする」しくみであり、資産の価値を保証するものではありません。
過去の主な事例
| 時期 | 業者 | 何が起きたか | その後 |
|---|---|---|---|
| 2014年2月 | マウントゴックス | 約85万BTCを失ったとして経営破綻 | 民事再生手続で、2024年からBTC・BCHで弁済を開始 |
| 2018年1月 | コインチェック | NEM約5億2,300万XEM(約580億円)が流出 | 約26万人に日本円で約463億円を補償 |
| 2018年9月 | Zaif(テックビューロ) | 約70億円(うち顧客分約45億円)が流出 | 事業をフィスコ仮想通貨取引所に譲渡し、顧客に暗号資産で補償 |
| 2022年11月 | FTX Japan | 親会社FTXの破綻を受け、業務停止命令 | 2023年2月に出金を再開。その後bitFlyer Holdingsが買収 |
| 2024年5月 | DMM Bitcoin | 4,502.9BTC(約482億円)が流出 | グループの支援で顧客のBTCを保証。2025年3月にSBI VCトレードへ口座と資産を移管 |
DMM Bitcoinの流出について、2024年12月に米国FBIと警察庁は、北朝鮮系のハッカー集団による犯行と発表しています。
海外では、2026年10月30日に大手取引所バイナンス(グローバル)のホットウォレットから約63億ドル(同社推計)が流出しました。日本向けのBinance Japanは、日本の顧客資産は別に管理しており影響は確認されていないと発表しています。くわしくはバイナンスで約63億ドル流出:日本の利用者への影響で整理しています。
これらの事例では、多くの場合、顧客の資産は補償や移管によって返されています。ただし、補償の方法(日本円か暗号資産か)や時期は事例によって違い、マウントゴックスのように返済まで10年近くかかった例もあります。
利用者ができる対策

- 金融庁の登録業者を使う:登録の確かめ方は金融庁の登録業者とは
- 複数の業者に分けて預ける:1社に何かあったときの影響を小さくする
- 二段階認証を設定する:アカウントの乗っ取りを防ぐ。→二段階認証とパスワードの管理
- 業者のお知らせを確認する:障害や取扱いの変更は、公式のお知らせで発表される
よくある質問
取引所が破綻したら、預けた暗号資産は必ず戻ってきますか
分別管理されている暗号資産は、優先して返してもらう権利があります。ただし、管理に不備があった場合などには、全額が戻らないおそれもあります。また、手続きに時間がかかることがあります。
自分のウォレットで管理したほうが安全ですか
取引所の破綻リスクはなくなりますが、鍵の紛失や詐欺のリスクはすべて自分で負います。どちらにもリスクがあります。くわしくはウォレットとはで説明しています。
過去に流出事件があった業者は避けるべきですか
事件のあとに補償や体制の見直しが行われた業者もあります。過去の事件だけで判断せず、現在の管理体制や登録状況、行政処分の有無などを合わせて確かめてください。
まとめ
- 日本の登録業者には、分別管理、95%以上のコールドウォレット管理、履行保証暗号資産、優先弁済権のしくみがある
- 値下がり、貸し出した暗号資産、無登録業者、自分のミスや詐欺は守られない
- 過去の流出・破綻の事例では、補償や移管で返された例が多いが、方法や時期はさまざま
出典
- e-Gov法令検索「資金決済に関する法律」
- e-Gov法令検索「暗号資産交換業者に関する内閣府令」
- 金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」資料(Zaifの流出について)
- 関東財務局「エフティーエックスジャパン株式会社に対する行政処分について」(2022年11月10日)
- 警察庁「北朝鮮を背景とするサイバー攻撃グループによる暗号資産の窃取について」(2024年12月24日)
- SBI VCトレード「DMM Bitcoinからの口座・資産の移管について」
- Mt.Gox 再生管財人のお知らせ
暗号資産は法定通貨ではなく、価格の変動により損失が生じることがあります。本記事は情報の提供を目的としており、特定の暗号資産の購入や取引の勧誘を目的とするものではありません。取引の判断は、ご自身の責任で行ってください。
