レベル:中級|記載の情報は2026年10月18日時点のものです。
株や債券、不動産、ファンドなどを、ブロックチェーン上で扱える「トークン」にすることを、トークン化といいます。2026年には、米国の大手取引所や証券会社が相次いで参入を発表し、「金融の次の大きな変化」として注目されています。
一方で、「株のトークン」と呼ばれるものの中には、本物の株と同じ権利を持たないものもあります。この記事では、次の順に整理します。
- トークン化とは何か、何が期待されているのか
- 米国・海外の主な動き
- 「トークン」と「株」は同じではない
- 日本で個人が買えるセキュリティトークン
- 「株のトークン」を見かけたときのチェックポイント
トークン化とは

トークン化とは、資産の持ち主や取引の記録を、ブロックチェーン上のトークンで管理することです。これまで証券会社や保管機関の帳簿で管理していた記録を、ブロックチェーンに移すイメージです。
期待されていることは、主に次の4つです。
- 24時間取引:ブロックチェーンには営業時間がないため、時間を問わず売買できる可能性がある
- 決済の短縮:売買と代金の受け渡しを同時に終える仕組みを作りやすい。国際決済銀行(BIS)も、この点を利点に挙げている
- 小口化:高額な資産を細かく分けて、少額から投資できるようにする
- ほかのサービスとの連携:担保として使うなど、DeFi(分散型金融)の仕組みと組み合わせられる可能性がある
ブロックチェーン上で動く金融サービスのしくみはDeFi(分散型金融)とはで説明しています。
米国・海外の主な動き
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年3月 | 米ブラックロックが、米国債などで運用するトークン化ファンドを開始 |
| 2025年6月30日 | 米ロビンフッドが、EUの利用者向けに米国株のトークンを開始(株価に連動するデリバティブ契約) |
| 2025年7月 | 米SECのピアース委員が「トークン化された証券も証券である」との声明 |
| 2025年9月 | 米ナスダックが、トークン化した株式を売買するためのルール変更をSECに申請 |
| 2026年1月19日 | ニューヨーク証券取引所(NYSE)が、トークン化した株式やETFを24時間売買できる仕組みの開発を発表 |
| 2026年3月18日 | SECが、ナスダックのトークン化株式の試験的な売買を承認 |
| 2026年6月22日 | NYSEの親会社ICEと暗号資産取引所OKXが、合弁会社の設立を発表(当局の承認が条件) |
| 2026年7月1日 | ロビンフッドが独自のブロックチェーンを稼働させ、株式トークンを発行 |
| 2026年8月24日 | 米コインベースが、米国外の利用者向けに株式のトークンを開始 |
| 2026年9月17日 | SECが、一定の条件でトークン化株式の売買を認める特例(5年間)を出す。トークンが元の株と同じ権利を持つことが条件 |
トークン化された資産の規模は、データサイトのrwa.xyzによると、ブロックチェーン上で売買や移転ができるものだけで約392億ドルです。そのうち、米国債などのトークンが約147億ドルを占めています(2026年10月17日時点)。
「トークン」と「株」は同じではない
注意したいのは、「株のトークン」と呼ばれるものが、すべて本物の株と同じとは限らないことです。米SECの職員は2026年1月、トークン化された株式を大きく次のように分けて説明しています。
| 種類 | 仕組み | 株主の権利 |
|---|---|---|
| 発行する会社自身がトークンにしたもの | 会社が株そのものをブロックチェーン上で発行・管理する | 株と同じ |
| 第三者が株を保管して発行したもの | 証券会社などが本物の株を保管し、それに対応するトークンを出す | 発行者の契約による。株主としての権利がないものもある |
| 株価に連動するだけのもの(合成型) | 株を持たず、株価と同じように値が動く契約をトークンにする | なし |
たとえば、ロビンフッドがEUで始めた株式トークンは、株価に連動するデリバティブ契約で、株主としての権利はなく、外部のウォレットにも移せないと説明されています。2025年7月には、ロビンフッドが配った「OpenAIのトークン」について、OpenAI自身が「当社の株式ではなく、移転も承認していない」と表明する騒ぎもありました。
欧州証券市場監督機構(ESMA)の幹部も、トークン化された株式は多くの場合、株主の権利を伴わないとして、投資家が誤解するリスクを指摘しています。
トークン化のリスク
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 権利の違い | 配当、議決権、会社が解散したときの分配などを受けられないことがある |
| 発行者・保管会社の信用 | トークンを出した会社や、株を保管する会社が破綻したときの扱いが問題になる |
| 流動性 | 売りたいときに買い手がいない、値段が元の株とずれる |
| 法律の不確実性 | 国によってルールが違い、トラブル時にどこの法律で守られるかが分かりにくい |
| 技術のリスク | プログラムの欠陥や、外部の価格を取り込む仕組みの誤作動 |
証券監督者国際機構(IOSCO)も2025年11月の報告書で、法的な不確実性や、運用・サイバー面のリスクを挙げています。外部の価格を取り込む仕組みのリスクはオラクルとはで詳しく説明しています。
日本で個人が買えるセキュリティトークン
日本では、2020年5月1日に施行された改正金融商品取引法で、ブロックチェーンなどを使って発行・移転する有価証券のルールが整えられました。法律上は「電子記録移転権利」などと呼ばれ、一般にはセキュリティトークン(ST)と呼ばれます。
特徴
- 買う場所は証券会社:暗号資産の取引所ではなく、SBI証券や大和証券などの証券会社で募集に申し込む
- 不動産が中心:一般向けに発行されたSTは、2026年3月末までの累計で82件、約3,333億円。2025年度の発行額の約85%が不動産を裏付けにしたものだった
- 少額から:1口10万円程度から申し込めるものがある
- 売買の場所が限られる:大阪デジタルエクスチェンジの「START」で、2023年12月25日から売買が始まった。2026年3月末時点で売買できるのは8銘柄で、注文は1日2回まとめて付け合わせる
気をつけたい点
- 流動性が低い:売買できる銘柄も参加者も少なく、売りたいときにすぐ売れるとは限らない
- 元本保証ではない:不動産の価値や賃料収入が下がれば、分配金や価格も下がる
- 募集期間が限られる:多くは期間を決めて募集され、条件は商品ごとに違う
内容は商品ごとに大きく違います。申し込む前に、証券会社が交付する目論見書や契約締結前交付書面で、裏付けの資産、分配の条件、売却の方法、手数料を確かめてください。
海外の「株式トークン」は日本から買えるか
ロビンフッドやコインベースの株式トークンは、2026年10月時点で国内の登録業者では扱われていません。海外の業者が日本の居住者に有価証券を販売するには、日本での登録が必要です。登録のない海外業者を利用すると、トラブルが起きても日本の利用者保護の仕組みで守られにくくなります。当サイトでは、登録のない業者の利用はすすめていません。無登録業者の確かめ方は金融庁の登録業者とはで説明しています。
「上場前の有名企業の株がトークンで買える」「24時間取引できる米国株」といった勧誘には注意してください。株主としての権利がない契約だったり、登録のない業者だったりすることがあります。
「株のトークン」を見かけたときのチェックポイント

- 権利:配当や議決権など、元の株と同じ権利があるか。株価に連動するだけの契約ではないか
- 発行者と保管:だれが発行し、元の株はどこが保管しているか
- 売る場所:いつ、どこで、いくらで売れるか
- 登録:販売している業者が、日本の金融庁に登録されているか
ステーブルコインやトークン化をめぐる米国の動きは、ドル建てステーブルコインはなぜ注目されるのかと米国の暗号資産政策をどう読むかでも整理しています。
よくある質問
トークン化された株でも配当はもらえますか
商品によります。元の株と同じ権利を持つように作られたものもあれば、株価に連動するだけで配当や議決権がないものもあります。商品の説明書で確かめてください。
セキュリティトークンは暗号資産の取引所で買えますか
セキュリティトークンは有価証券として扱われるため、暗号資産の取引所ではなく、証券会社で扱われます。暗号資産とは法律上の扱いも税金の扱いも異なります。
不動産のセキュリティトークンとREITは何が違いますか
どちらも不動産に投資する商品ですが、REITの多くは証券取引所に上場して毎日売買されています。不動産のセキュリティトークンは、売買できる場所や回数が限られ、REITより流動性が低いのが一般的です。
まとめ
- トークン化は、資産の記録をブロックチェーンに移すこと。24時間取引や決済の短縮、小口化が期待されている
- 「株のトークン」には、株と同じ権利を持つものと、株価に連動するだけのものがある。米SECは2026年9月、同じ権利を持つことを条件に特例を出した
- 日本では、証券会社でセキュリティトークンを買える。不動産が中心で、流動性の低さに注意が必要
出典
- Robinhood「Robinhood Launches Stock Tokens」(2025年6月30日)
- Robinhood EU「About Stock Tokens」
- TechCrunch「OpenAI condemns Robinhood’s ‘OpenAI tokens’」(2025年7月2日)
- 米証券取引委員会「ピアース委員の声明:Enchanting, but Not Magical」(2025年7月9日)
- Barnes & Thornburg「SEC Statement on Securities Tokenization」(2026年)
- Intercontinental Exchange「The New York Stock Exchange Develops Tokenized Securities Platform」(2026年1月19日)
- The Block「SEC approves Nasdaq tokenized equities trading pilot」(2026年3月)
- The Block「ICE and OKX joint venture」(2026年6月)
- Robinhood Chain「Stock Tokens」
- Decrypt「Coinbase launches tokenized stocks」(2026年8月)
- 米証券取引委員会「Order, Release No. 34-106402」(2026年9月17日)
- rwa.xyz(トークン化資産のデータ)
- ESMA「Natasha Cazenave講演」(2025年9月)
- IOSCO「Tokenization Final Report」(2025年11月)
- 国際決済銀行(BIS)「Annual Economic Report 2025 第3章」
- 新日本法規「改正金融商品取引法の施行」
- 野村ホールディングス(BOOSTRY)「2025年度のセキュリティトークン市場」(2026年4月2日)
- 三井住友銀行「START での取引開始」(2023年12月25日)
- 三菱UFJ信託銀行「不動産セキュリティトークンの発行」(2025年9月)
- 関東財務局「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等」
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