レベル:中級|記載の情報は2026年10月18日時点のものです。
「ドルがデジタルにアップグレードされる」「ステーブルコインは銀行預金より安全」「年7%の利息がつく」「市場は数年で10倍になる」。ステーブルコインが注目されるにつれ、こうした宣伝を見かけることが増えました。
実際に、米国では2025年にステーブルコインの法律ができ、銀行や決済大手も動き出しています。ただ、宣伝の中には、事実と予測と誤解が混ざっています。
この記事では、次の順に整理します。
- 米国の主な動き(年表)
- 銀行預金との違い
- よくある宣伝文句の検証
- 日本で使えるステーブルコイン
- 関連の投資をすすめられたときのチェックポイント
ステーブルコインの基本はステーブルコインとはで説明しています。
米国の主な動き
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年1月23日 | 大統領令14178号。米ドル建てのステーブルコインの発展を後押しする方針を示す |
| 2025年5月 | 米大手銀行が出資する会社どうしで、共同のステーブルコインを協議していると報道される |
| 2025年6月17日 | 上院がGENIUS法を68対30で可決 |
| 2025年7月18日 | GENIUS法が成立 |
| 2026年5月 | 上院で、ステーブルコインの「報酬」の扱いをめぐる妥協案がまとまる |
| 2026年6月11日 | 送金サービスZelleの運営会社が、ドル建てステーブルコインの計画を発表(開始日は未定) |
| 2026年9月15日 | 市場構造法案(CLARITY法案)の上院での審議入りの採決が否決 |
データサイトのDefiLlamaによると、ステーブルコイン全体の時価総額は約3,026億ドルです(2026年10月17日時点)。そのうち約6割をUSDT、約24%をUSDCが占めています。米国の政策全体の流れは米国の暗号資産政策をどう読むかで整理しています。
銀行預金と何が違うか

| 銀行預金 | ドル建てステーブルコイン(GENIUS法のルール) | |
|---|---|---|
| お金の行き先 | 銀行が貸し出しなどに使う | 発行額と同額以上の準備資産(米ドル、短期の米国債など)で持つ |
| 公的な保護 | 預金保険の対象(米国では1つの銀行につき、預金者1人あたり原則25万ドルまで) | 預金保険の対象外。保険があるように宣伝することも禁止 |
| 発行者が破綻したとき | 預金保険で保護される | 保有者は準備資産から優先して返してもらえる |
| 利息 | 銀行が支払う | 発行者が保有者に利息を払うことは禁止 |
| 送金 | 銀行の営業時間や国際送金の仕組みに左右される | ブロックチェーン上で24時間、短い時間で送れる |
米国では2020年3月26日から、銀行の預金準備率が0%になっています。宣伝では、ここから「銀行は預金を手元に置いていない。だからステーブルコインのほうが安全だ」と説明されることがあります。準備率が0%なのは事実です。ただし、預金には預金保険があり、ステーブルコインにはありません。どちらが安全かは、一面だけでは決まりません。
よくある宣伝文句を検証する

「ステーブルコインは銀行預金より安全」
一面的です。準備資産で裏付けられていても、価値が1ドルを割り込んだ例があります。2023年3月、USDCは準備金の一部を破綻したシリコンバレー銀行に預けていたことが分かり、一時0.86〜0.88ドル程度まで下がりました。準備資産の中身、保管先、監査の状況によって、安全性は変わります。
「ステーブルコインで年7%の利息がつく」
GENIUS法は、発行者が保有者に利息や利回りを払うことを禁止しています。一方、取引所などの第三者が「報酬」を払えるかどうかは、法律で決まりきっておらず、銀行業界と暗号資産業界の対立点になっています。2026年5月に上院でまとまった妥協案は、預金の利息と同じような報酬は認めず、決済や取引などの活動に応じた報酬は認める、という内容でした。
また、X(旧Twitter)の決済サービス「X Money」の「最大6%」は、提携銀行に預ける現金口座の利回りで、ステーブルコインの利息ではありません。高い利回りを見たら、「だれが、何を元手に払っているのか」を確かめる必要があります。
「市場は2030年に3.7兆ドル、今の10倍以上になる」
よく引用される3.7兆ドルは、米シティグループが2025年4月に示した強気のシナリオです。基本シナリオは1.6兆ドルでした(同年9月に、それぞれ4.0兆ドルと1.9兆ドルに引き上げ)。ベッセント米財務長官も、この報道を引用する形で触れています。いずれも予測であり、約束された数字ではありません。
さらに、市場が大きくなることと、関連する株や暗号資産の値段が上がることは、別の話です。
「SNS大手の決済サービスが、ステーブルコインでドルを変える」
X Moneyは、2026年に米国で有料会員向けに提供が始まりました。ただし、Visaと組んだカード決済や個人間の送金、現金口座などの、法定通貨を使ったサービスで、2026年10月時点で暗号資産やステーブルコインは使っていません。
「国際送金の手数料がほぼゼロになる」
世界銀行の調査では、200ドルを国際送金するときの手数料は世界平均で6.36%(2025年第3四半期)、銀行経由では14.55%(2025年第1四半期)です。ステーブルコインは、このコストを下げる手段として期待されています。ただし、日本円や現地の通貨への両替、出金の手数料、受け取る国のルールによって、実際のコストはゼロにはなりません。
株や債券を載せる「トークン化」
ステーブルコインと並んで注目されているのが、株や債券、ファンドなどをブロックチェーンに載せる「トークン化」です。資産運用大手の米ブラックロックは、2024年3月に米国債などで運用するトークン化ファンド「BUIDL」を始め、2025年3月には運用額が10億ドルを超えました。同社のフィンクCEOは2025年の株主への手紙で、「あらゆる資産はトークン化できる」と書いています。
ただし、こうしたファンドの多くは機関投資家向けで、日本の個人がそのまま買えるものではありません。
日本で使えるステーブルコイン
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2023年6月1日 | 改正資金決済法が施行され、ステーブルコインが「電子決済手段」として位置づけられる |
| 2025年3月 | SBI VCトレードが、国内で初めてUSDCの取扱いを始める |
| 2025年10月27日 | JPYC社が、円建てステーブルコイン「JPYC」の発行を始める |
| 2026年6月 | 3メガバンクが、共同で検討している信託型のステーブルコインについて、2026年度中の実際の取引を目指すことで合意 |
ドル建てのステーブルコインを日本円で持つ場合は、為替の変動で円での価値が上下します。SBI VCトレードの取扱いについてはSBI VCトレードの特徴・手数料・注意点をご覧ください。
「ステーブルコイン関連の投資」をすすめられたら
- ステーブルコインそのものは、値上がりを狙う資産ではない:1ドルなどの価値を保つように作られている
- 普及と値上がりは別:「インフラを担う会社」「関連銘柄」の値段は、ステーブルコインの普及とは別の理由でも動く
- 予測の出どころを確かめる:だれが、いつ、基本と強気のどちらのシナリオで出した数字か
- 利回りの源泉を確かめる:発行者は利息を払えない。高い利回りには、貸し出しや運用のリスクがある
- 煽りの言葉に注意する:「取り残される」「◯倍に化ける」「期間限定」「成功した人の声」だけの勧誘は、立ち止まる
- 登録を確かめる:暗号資産や電子決済手段を扱う業者、有料で投資の助言をする業者には、金融庁への登録が必要な場合がある
銘柄そのものの調べ方は銘柄の中身を調べる5つの視点、テーマに乗じた詐欺の例はAI×暗号資産とはでも紹介しています。
「ステーブルコインだから安全」「国が後押ししているから値下がりしない」と考えるのは危険です。ステーブルコインにも、発行者の破綻、準備資産の毀損、価値の一時的なずれといったリスクがあります。関連する株や暗号資産は、値下がりすることもあります。
よくある質問
ステーブルコインを持っていれば値上がりしますか
ステーブルコインは、1ドルや1円などの価値を保つように作られています。値上がりを期待して持つものではありません。ドル建ての場合、円での価値は為替によって変わります。
日本でUSDCを買えますか
2026年10月時点で、国内ではSBI VCトレードがUSDCを扱っています。取扱いの条件や手数料は、公式サイトで確かめてください。
円建てとドル建てのどちらがいいですか
日本円で使う予定なら、為替の影響を受けない円建てが分かりやすいといえます。ドル建ては、ドルで支払う、ドルの資産を持ちたいといった目的がある場合に向いています。
まとめ
- 米国ではGENIUS法が成立し、銀行や決済大手の動きも始まっている。市場規模は約3,000億ドル
- 「預金より安全」「利回り7%」「市場は10倍」は、事実の一部を切り取ったり、予測や別の商品を混ぜたりした説明が多い
- ステーブルコインは値上がりを狙う資産ではない。関連の投資は、予測の出どころ、利回りの源泉、登録の有無を確かめる
あわせて読みたい
出典
- 米国政府「大統領令14178号」(2025年1月23日)
- 米議会「GENIUS法(S.1582)条文」
- 米上院民主党「June 17, 2025 採決結果」
- The Block「Major US banks in early talks for joint stablecoin venture」(2025年5月)
- Zelle「ZelleUSD」発表(2026年6月11日)
- Baker McKenzie「The CLARITY Act’s Yield Compromise」(2026年5月)
- DefiLlama「Stablecoins」
- 米連邦準備制度理事会「Reserve Requirements」
- Citi GPS「Stablecoins 2030」
- 米財務省「ベッセント長官の講演」(2025年11月12日)
- X Money「Licenses」
- Engadget「X Money begins limited US rollout」(2026年7月)
- Kitco「Circle assures market after stablecoin USDC breaks dollar peg」(2023年3月11日)
- 世界銀行「Remittance Prices Worldwide」
- BlackRock「BUIDL」発表(2024年3月20日)
- BlackRock「2025年 会長からの手紙」
- 金融庁「改正資金決済法等の施行について」(2023年5月26日)
- Circle「USDC in Japan」(2025年3月)
- Impress Watch「JPYC、発行開始」(2025年10月27日)
- 三菱UFJ銀行「ステーブルコインの共同検討に関するお知らせ」(2026年6月10日)
暗号資産は法定通貨ではなく、価格の変動により損失が生じることがあります。本記事は情報の提供を目的としており、特定の暗号資産の購入や取引の勧誘を目的とするものではありません。取引の判断は、ご自身の責任で行ってください。
