レベル:中級|記載の情報は2026年10月18日時点のものです。
「米国でビットコインのETFが承認」「米政府がビットコインを準備資産に」。こうしたニュースは、暗号資産の価格が大きく動くきっかけになってきました。ただ、見出しだけでは、何が決まり、何が決まっていないのかが分かりません。
この記事では、2024年以降の米国の主な政策を時系列で整理し、ニュースを読むときのチェックポイントを紹介します。
2024年以降の主な出来事
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年1月10日 | SEC(米証券取引委員会)が、ビットコインの現物ETFの上場を承認 |
| 2024年7月23日 | イーサリアムの現物ETFの取引が始まる |
| 2025年1月23日 | デジタル金融技術に関する大統領令 |
| 2025年3月6日 | 戦略的ビットコイン準備とデジタル資産備蓄を設ける大統領令 |
| 2025年4月21日 | ポール・アトキンス氏がSEC委員長に就任 |
| 2025年7月18日 | ステーブルコイン法(GENIUS法)が成立 |
| 2025年9月17日 | SECが、暗号資産を含むETPの包括的な上場基準を承認 |
| 2025年10月〜 | ソラナやXRPなどを対象にした現物ETFが相次いで上場 |
| 2026年8月18日 | SECが、暗号資産の発行に関する新しい規則案を公表 |
| 2026年9月15日 | 市場構造法案(CLARITY法案)の上院での審議入りの採決が否決 |
現物ETF:何が変わり、何が変わらないか
ETF(上場投資信託)は、証券取引所で株と同じように売買できる投資信託です。現物ETFが承認されたことで、米国の投資家は、暗号資産の口座を開かなくても、証券口座からビットコインなどに投資できるようになりました。
2024年1月の承認にあたり、当時のゲンスラーSEC委員長は「ビットコインを認めたわけではない」との声明を出しています。2025年9月には、一定の条件を満たす商品を個別の審査なしに上場できる基準が承認され、ビットコインとイーサリアム以外の銘柄のETFも上場するようになりました。
日本では、2026年10月時点で暗号資産のETFは買えません。くわしくは暗号資産ETFとはで説明しています。
戦略的ビットコイン準備:政府が買っているわけではない
2025年3月6日の大統領令で、米国は「戦略的ビットコイン準備」を設けました。ここで押さえておきたいのは、次の3点です。
- 準備に入るのは、刑事・民事の事件で政府が没収したビットコイン。この大統領令で新たに買い入れるものではない
- 準備に入れたビットコインは売却しないとされている
- 追加で取得する方法を検討してよいが、予算に負担をかけない方法に限られる
「米国政府がビットコインを買い始めた」という理解は正確ではありません。
ステーブルコイン法(GENIUS法)
2025年7月18日に成立したGENIUS法は、米ドル建てのステーブルコインのルールを定めた法律です。主な内容は次のとおりです。
- 発行額と同額以上の準備資産(米ドル、短期の米国債など)を持つ
- 準備資産の内訳を毎月公表する
- 発行できるのは、銀行の子会社や、認められた事業者などに限る
- 保有者に利息を払うことは禁止
- 発行者が破綻したとき、保有者は優先して返してもらえる
施行は、成立から18か月後か、最終的な規則が出てから120日後の、いずれか早い日とされています。日本のステーブルコインのルールとの違いはステーブルコインとはで説明しています。
市場構造法案(CLARITY法案)は審議が止まっている
暗号資産のどれが証券で、どれが商品なのかを整理し、SECとCFTC(米商品先物取引委員会)の役割分担を決める法案がCLARITY法案です。2025年7月に下院を通過しましたが、上院では2026年9月15日に審議入りの採決が否決されました。法律事務所の分析では、今の議会の会期中に成立する見込みは低いとされています。
ニュースを読むときの3つのチェックポイント

1. 決まったことか、提案や検討か
大統領令、法律の成立、SECの承認は「決まったこと」です。一方、法案の提出、規則案の公表、「検討している」という発言は、まだ決まっていません。見出しの動詞を確かめるだけでも、読み違いが減ります。
2. 仕組みが変わることと、価格が上がることは別
政策で仕組みが整うことと、暗号資産の価格が上がることは、別の話です。ニュースが出る前から期待が価格に織り込まれていて、発表後に値下がりすることもあります。
3. 日本の利用者に何が関係するか
米国のルールは、そのまま日本で適用されるわけではありません。日本の暗号資産のルールは、2026年に成立した改正法で金融商品取引法に移ります。国内の動きは2026年の暗号資産の制度改正まとめで整理しています。
よくある質問
米国のETFの動きで、日本でもETFが買えるようになりますか
日本でETFを扱うには、投資信託に関する法令の見直しが必要です。米国での承認が直接日本に及ぶわけではありません。
政策のニュースで売買したほうがいいですか
政策のニュースは、発表の前後に値動きが大きくなりやすい場面です。ニュースを見てあわてて売買すると、高値で買い安値で売る結果になりがちです。考え方は高値で買って安値で売ってしまう理由で説明しています。
一次情報はどこで確かめられますか
米国の大統領令はホワイトハウス、法律は米議会、SECの決定はSECのウェブサイトで原文を読めます。この記事の出典にリンクをまとめています。
まとめ
- 現物ETFの承認は「投資の入り口が広がった」こと。SECは「ビットコインを認めたわけではない」としている
- 戦略的ビットコイン準備は、没収したビットコインを売らずに持つ仕組み。新たな買い入れではない
- ニュースは「決まったことか」「仕組みと価格は別」「日本に関係するか」の3点で読む
あわせて読みたい
出典
- 米証券取引委員会「ゲンスラー委員長の声明(ビットコイン現物ETP)」(2024年1月10日)
- Baker McKenzie「Ethereum ETFs to start trading today」(2024年7月23日)
- 米国政府「大統領令14178号」(2025年1月23日)
- ホワイトハウス「戦略的ビットコイン準備と米国デジタル資産備蓄の設立」(2025年3月6日)
- 米証券取引委員会「アトキンス委員長の就任」(2025年4月21日)
- Covington「The GENIUS Act Becomes Law」(2025年7月)
- Fenwick「Congress Enacts Comprehensive Stablecoin Legislation」
- 米証券取引委員会「包括的な上場基準の承認」(2025年9月17日)
- Deloitte「SEC proposed rule on crypto assets」(2026年8月)
- Orrick「The CLARITY Act Stalls in the Senate」(2026年10月)
暗号資産は法定通貨ではなく、価格の変動により損失が生じることがあります。本記事は情報の提供を目的としており、特定の暗号資産の購入や取引の勧誘を目的とするものではありません。取引の判断は、ご自身の責任で行ってください。
