レベル:中級|記載の情報は2026年10月18日時点のものです。
ビットコインは「デジタルゴールド(デジタルの金)」と呼ばれることがあります。発行量に上限があり、政府や中央銀行が増やせないことから、「お金の価値が下がる局面で、金と同じように資産を守る役割を果たす」という考え方です。
最近では、米国の政府債務の膨張や長期金利の上昇を背景に、この説が語られることが増えています。この記事では、データと研究でこの説を確かめます。
- 「デジタルゴールド」説の中身
- 背景にある米国の財政と金利
- 実際の値動きは金と同じだったか
- 研究機関の分析
- 日本の投資家が考えておきたいこと
「デジタルゴールド」説の中身
この説の土台は、次のような考え方です。
- 政府の借金が増えると、政府はその支払いのためにお金を増やすのではないか、という不安が高まる
- お金が増えれば、お金1単位あたりの価値は下がる
- そのため、量を増やせない資産に資金が向かう。これまでの代表が金で、ビットコインも発行上限が2,100万枚と決まっている
ビットコインと金には、たしかに共通点があります。
| 金 | ビットコイン | |
|---|---|---|
| 供給量 | 採掘で少しずつ増えるが、急には増やせない | 発行上限は2,100万枚。新規発行のペースもあらかじめ決まっている |
| 発行する主体 | なし | なし |
| 利息や配当 | 生まない | 生まない |
| 歴史 | 数千年にわたって価値の保存に使われてきた | 2009年に誕生 |
発行のしくみはビットコインの半減期とはで説明しています。
背景にある米国の財政と金利

| 指標 | 数字 |
|---|---|
| 米国の政府債務の総額 | 約40.3兆ドル(2026年10月8日) |
| 市中に出回る国債などの残高(GDP比) | 2026年に101%。米議会予算局(CBO)は2036年に120%と見込み、1946年の過去最高(106%)を超えるとしている |
| 国債の利払い(2026会計年度) | 約1.14兆ドル。高齢者向け医療保険や国防の支出を上回り、歳出の約15% |
| 米国10年国債の利回り | 10月5日に5.31%と2002年以来の水準まで上昇。10月16日は5.09% |
※歳出に占める割合は、CBOの数字をもとに当サイトで計算しました。
財政への不安が強まっているのは事実です。では、ビットコインは実際に「金のような動き」をしてきたのでしょうか。
実際の値動きは金と同じだったか
| 局面 | 何が起きたか |
|---|---|
| 2020年3月12日(コロナ・ショック) | ビットコインは1日で5割近く下落した |
| 2022年(高インフレ) | 米国の物価上昇率が6月に前年比9.1%と約40年ぶりの水準に。同じ年、ビットコインは約64%下落した |
| 2025年4月(関税ショック) | 月の前半、ビットコインは株と一緒に7万6,000ドル前後まで下落。金は4月11日に最高値を更新した。月間では、ビットコインが13.7%上昇、金が3.9%上昇、米国株(S&P500)が1.1%下落 |
| 2025年10月〜2026年10月 | ビットコインは2025年10月6日の最高値(約12万6,000ドル)から約3割下落。金も2026年1月の最高値(約5,590ドル)から約25%下落している |
インフレが強まった2022年に大きく下がり、急な危機の場面では株と一緒に売られる。少なくとも短期的には、金のように「危機のときに買われる資産」として動いてきたとは言いにくい結果です。
研究機関の分析
研究の結果は、一方向ではありません。
「デジタルゴールド」の性質を示す分析
- 2022年の学術論文(Choi & Shin)は、インフレやインフレ予想が高まった後にビットコインが上がる傾向を示し、インフレへの備えとしての面があるとしました。ただし同じ論文は、金融市場の不安が高まった場面では下落し、金のような安全資産ではないとも結論づけています
- 米ブラックロックは2024年のリポートで、ビットコインと株や金利との連動は一時的なものが多く、ほかの資産と異なる値動きをする「独自の分散先」だと説明しています
リスク資産に近い動きを示す分析
- 国際通貨基金(IMF)は2022年、ビットコインと米国株(S&P500)の値動きの関係を示す相関係数が、2017〜2019年の0.01から、2020〜2021年に0.36へ高まったと指摘しました
- IMFの2023年の論文は、米国の金融引き締めが、株と同じように暗号資産の価格も押し下げると分析しています
- 2023年の学術論文(Karau)も、2020年後半以降、ビットコインは米国の金融政策に「リスク資産のように」反応するようになったとしています
- コロナ・ショックを分析した2020年の論文(Conlon & McGee)は、ビットコインは株と一緒に下落し、安全資産の役割を果たさなかったとしています
値動きの大きさはまったく違う

資産運用会社WisdomTreeの集計では、2013年末以降の年率の値動きの大きさ(ボラティリティ)は、ビットコインが67.0%、金が14.5%でした。直近ではビットコインの値動きは小さくなってきていますが、それでも金よりはるかに大きい水準です。値動きの大きさは過去の暴落はどれくらい深かったかでも紹介しています。
だれが持っているか
ビットコインを持つ主体も変わってきています。
- 米国のビットコイン現物ETFは、合計で約129万BTCを保有しています(2026年10月8日、集計サイトによる)
- 米国の上場企業Strategyは、約84.8万BTCを保有しています(2026年10月)
- 米国政府は2025年3月、没収したビットコインを売らずに持つ「戦略的ビットコイン準備」を設けました
大口の保有者が増えたことは、売買の厚みにつながる一方、ETFからの資金流出などで値動きが大きくなる要因にもなります。米国の政策は米国の暗号資産政策をどう読むかで整理しています。
日本の投資家が考えておきたいこと
- 円建てでは為替も動く:ドルと円の為替は2026年10月9日時点で1ドル=158円台です。円で見たビットコインの値段は、ドル建ての値動きと為替の両方の影響を受けます
- 日本のインフレ率は米国と違う:日本の消費者物価(生鮮食品を除く)は、2026年8月に前年比1.7%でした。「インフレへの備え」という説明が、日本の状況にそのまま当てはまるとは限りません
- 法定通貨ではない:日本銀行は、暗号資産は法定通貨ではなく、裏付け資産を持たず、価格が大きく変動する傾向がある点に注意が必要だと説明しています
「財政が悪化するから、ビットコインは必ず上がる」といった説明には注意してください。財政不安が強まった局面でも、金利の上昇や資金の引き揚げによって、ビットコインが大きく下落したことがあります。
よくある質問
金とビットコイン、どちらを持つべきですか
当サイトはどちらかをすすめることはしません。値動きの大きさも、価格が動く理由も異なります。持つ場合は、資産全体の中での割合を決めることが大切です。考え方は暗号資産は資産の何%まで?で説明しています。
インフレになればビットコインは上がりますか
インフレの後に上がる傾向を示す研究もありますが、2022年のように高インフレの中で大きく下落した年もあります。インフレと同時に金利が上がる局面では、下落しやすい傾向も指摘されています。
政府が持つようになれば、値下がりしにくくなりますか
米国政府の戦略的準備は、没収したビットコインを売らずに持つ仕組みで、新たに買い入れるものではありません。価格の下支えになるとは言い切れません。
まとめ
- ビットコインは発行上限があり、発行する主体がないという点で金に似ている
- ただし実際の値動きは、2022年の高インフレやコロナ・ショックの場面で大きく下落するなど、金より株などのリスク資産に近い時期が多かった
- 長い期間で見た値動きの大きさは、金の4倍以上。「デジタルゴールド」は性質の一部を表す言葉と考え、財政のニュースだけで値上がりを期待しない
出典
- 米財務省「Debt to the Penny」
- 米議会予算局(CBO)「議会証言」(2026年3月11日)
- 米議会予算局(CBO)「Monthly Budget Review」(2026年10月8日)
- 米財務省「Daily Treasury Par Yield Curve Rates」(2026年10月)
- ホワイトハウス「戦略的ビットコイン準備に関するファクトシート」(2025年3月)
- Coin Metrics「State of the Network」(2020年3月)
- 米労働統計局「Consumer prices up 9.1 percent over the year ended June 2022」
- Benzinga「El-Erian’s monthly asset performance table」(2025年5月)
- Choi & Shin「Inflation hedging and safe havens: Bitcoin」(Finance Research Letters, 2022)
- The Block「BlackRock’s new bitcoin paper」(2024年9月)
- 国際通貨基金(IMF)ブログ「Crypto Prices Move More in Sync With Stocks」(2022年1月11日)
- 国際通貨基金(IMF)「The Crypto Cycle and US Monetary Policy」(2023年)
- Karau「Monetary policy and Bitcoin」(Journal of International Money and Finance, 2023)
- Conlon & McGee「Safe haven or risky hazard? Bitcoin during the Covid-19 bear market」(Finance Research Letters, 2020)
- WisdomTree「Better together: bitcoin and gold」
- DefiLlama「Digital Asset Treasury:Strategy」
- 米セントルイス連銀(FRED)「円ドル為替レート」
- 日本銀行「暗号資産(仮想通貨)とは何ですか?」
暗号資産は法定通貨ではなく、価格の変動により損失が生じることがあります。本記事は情報の提供を目的としており、特定の暗号資産の購入や取引の勧誘を目的とするものではありません。取引の判断は、ご自身の責任で行ってください。
