レベル:中級|記載の情報は2026年10月18日時点のものです。
暗号資産の利益は、売って日本円に戻すまでは確定しません。値上がりした画面を見ていても、売らないまま値下がりすれば、利益は消えてしまいます。一方で、少し上がっただけで売ってしまい、その後の上昇を逃すこともあります。
この記事では、売るタイミングを感情ではなくルールで決めるための考え方を説明します。
- 出口は「目的」と「期限」から決める
- 一度に売らない:分割売却
- 損切りの基準を決めておく
- 売るときに知っておきたい税金のルール
出口は「目的」と「期限」から決める

まず、「何のために」「いつまでに」使うお金なのかを決めます。出口の考え方は、目的と期限によって変わります。
| 目的と期限の例 | 出口の考え方の例 |
|---|---|
| 数年後の大きな出費に充てたい | 期限の1〜2年前から少しずつ売り、値動きの影響を減らす |
| 老後に向けて長く持ちたい | 配分の上限を超えた分だけ売る。売る理由を事前に決める |
| 値上がりしたら一部を利益として確定したい | 目標の値段や上昇率を決め、段階的に売る |
「いくらになったら売るか」だけでなく、「いつまでに使うか」を決めておくと、値動きに振り回されにくくなります。
一度に売らない:分割売却
天井(いちばん高い値段)で全部売るのは、ほぼ不可能です。天井は、後になってからしか分かりません。そこで、値上がりの途中で、少しずつ売るという方法があります。
分割売却の例
1BTCを持っている人が、決めた条件ごとに4分の1ずつ売る場合です。
| 条件の例 | 売る量 | 残り |
|---|---|---|
| 買値から50%上昇 | 0.25BTC | 0.75BTC |
| 買値から2倍 | 0.25BTC | 0.5BTC |
| 買値から3倍 | 0.25BTC | 0.25BTC |
| 残りは長く持つ、または期限で売る | — | — |
※説明のための例です。条件や割合をすすめるものではありません。
分割売却には、次のような利点があります。
- 途中で値下がりしても、一部の利益は確定している
- その後も値上がりした場合に、残りの分で上昇を受けられる
- 「いつ売るか」を毎回悩まなくてすむ
時期を決めて分ける方法もあります。たとえば「毎月、決まった量を売る」「毎年、決まった時期に配分を見直す」などです。
損切りの基準を決めておく

値下がりしたときの「出口」も必要です。損失回避の心理から、含み損を確定するのは誰にとってもつらいものです。だからこそ、買う前に基準を決めておきます。
- 値段で決める:買値から◯%下がったら売る
- 理由で決める:買った理由(用途の広がり、開発の継続など)がなくなったら売る
- 配分で決める:資産全体での上限を超えないよう、ほかの資産とのバランスで判断する
値段で決める場合は、銘柄ごとの値動きの大きさを考えます。値動きの大きい銘柄に狭い幅を設定すると、少しの上下ですぐ売ることになります。注文で自動化する方法は逆指値(ストップ)の使い方と限界、心理の仕組みは高値で買って安値で売ってしまう理由で説明しています。
売るときに知っておきたい税金のルール
2026年10月時点では、暗号資産の利益は原則として雑所得になり、給与などほかの所得と合わせて税率が決まる総合課税です。
所得税は所得が増えるほど税率が上がる
所得税は、課税される所得が大きくなるほど、高い税率が適用される仕組みです(超過累進税率)。
| 課税される所得 | 所得税の税率 |
|---|---|
| 195万円未満 | 5% |
| 195万円以上330万円未満 | 10% |
| 330万円以上695万円未満 | 20% |
| 695万円以上900万円未満 | 23% |
| 900万円以上1,800万円未満 | 33% |
| 1,800万円以上4,000万円未満 | 40% |
| 4,000万円以上 | 45% |
このほかに、住民税と復興特別所得税(2026年分は所得税額の2.1%)がかかります。
1年の間に大きな利益を確定すると、その年だけ高い税率の段階に入ることがあります。売る時期を複数の年に分けると、年ごとの所得が平らになり、税率の段階が変わる場合があります。どの年に売るのが有利かは、ほかの所得によって変わるため、税務署や税理士に確認してください。
そのほかの主なルール
- 暗号資産どうしの交換も課税対象:別の暗号資産に交換した時点で、利益が確定したものとして扱われる
- 会社員の20万円の基準:給与所得以外の所得が年20万円以下なら、所得税の確定申告は不要。ただし住民税の申告は必要
- 損失はほかの所得と相殺できない:雑所得の損失は、給与所得などと相殺できず、翌年に繰り越すこともできない
- 2028年からの見込み:申告分離課税(20.315%)の導入が決まっている。くわしくは申告分離課税はいつから?
税金の扱いは、所得の状況や取引の内容によって異なります。この記事は一般的な仕組みの説明です。実際の申告は、国税庁の情報を確認し、必要に応じて税務署や税理士に相談してください。
よくある質問
利益が出たら、売らずに持っていれば税金はかかりませんか
日本円に換えたり、ほかの暗号資産に交換したり、商品の購入に使ったりしない限り、値上がりしただけでは税金はかかりません。ただし、その間に値下がりするリスクがあります。
分割売却と全部売るのでは、どちらが得ですか
結果は、その後の値動きによって変わります。分割売却は、利益を最大にする方法ではなく、「売り時を外したときの後悔を小さくする」方法です。
売った後、また買い直してもいいですか
問題ありません。ただし、売って利益が出た時点で課税されます。また、売った直後に買い直すと、手数料やスプレッドの分だけコストがかかります。
まとめ
- 出口は「何のために」「いつまでに」から決める。天井で全部売るのは不可能
- 値上がりの途中で少しずつ売る分割売却と、値下がり時の損切りの基準を、買う前に決めておく
- 2026年は総合課税。1年に利益が集中すると税率の段階が上がることがある。暗号資産どうしの交換も課税対象
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」
- 国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
- 国税庁 タックスアンサー No.2070「純損失の繰越控除と繰戻し還付」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
- 神戸市「市県民税の申告」
暗号資産は法定通貨ではなく、価格の変動により損失が生じることがあります。本記事は情報の提供を目的としており、特定の暗号資産の購入や取引の勧誘を目的とするものではありません。取引の判断は、ご自身の責任で行ってください。
